塩水噴霧試験に関するまとめ|表面を科学する【株式会社ケミコート】

塩水噴霧試験に関するまとめ

 商品を少しでも長く、購入時の状態のまま使用できるように、金属加工業者は様々な試験を行っています。塩水噴霧試験もそのような試験の1つです。

塩水噴霧試験とは

 鉄のような金属材料は、酸化物や硫化物として採掘された鉱石を還元操作して、人為的に作られたものです。このため、空気中の酸素や水分に長時間触れていると、酸化鉄に戻ろうとする現象(腐食)が始まります。この腐食によって溶けだした金属イオンと水溶液の化学成分が反応して出来あがるものが錆です。錆は、雨の降らない場所よりも雨が降る場所、さらには海岸地方の方が生じやすい傾向にあります。これは、自然海水や雨水にさらされることで、イオンとして溶け出しやすくなり、腐食や錆の生成がより速く進むようになるためです。
 腐食を防ぐため、身の回りで使っている鉄には、めっきや塗装などの表面加工が施されています。このメッキ皮膜,塗装皮膜を施した金属材料などの耐食性を評価する方法の1つが塩水噴霧試験です。

塩水噴霧試験装置の構成

 塩水噴霧試験は、一定の温度(33℃~37℃)に保たれた塩水噴霧試験装置内に試料を設置し、その上から霧状にした中性の塩化ナトリウム溶液(濃度5%)を噴霧して行います。その後、一定時間を置いてから、表面に生じた錆の状態を観察します。日常的な環境よりも過酷な状況で試験を行うことにより、より早く、めっきや塗装の良し悪しを知ることができます。
 塩水噴霧試験において重要なことは常に塩水噴霧の量、質を均一にし、温度を一定に保つことです。塩水を噴霧するためにアトマイザー、ミストマイザーと呼ばれるものを使用します。塩水が装置内全体に均一に噴霧されているか確認、調整をする必要があります。この際、霧の発生量を一定に保つため、供給される空気を一定に保つ必要があります。また、高湿の飽和空気(水蒸気の量が限界に達した空気)でなければなりません。このため、一定の温度を維持した空気飽和器と呼ばれる水槽を通す仕組みになっています。

噴霧溶液の種類

 主として行われる塩水噴霧試験には、中性塩水噴霧試験、酢酸酸性塩水噴霧試験、キャス試験の3種類があります。これらは、それぞれ使用される噴霧溶液が異なります。中性塩水噴霧試験では、水1リットル中に塩(50g)溶かし、pH6.5〜7.2になるように調整された溶液を使用します。酢酸酸性塩水噴霧試験では中性塩水に酢酸を加えた溶液、キャス試験では0.26gの塩化銅(Ⅱ)二水和物を溶かした後に酢酸を加えた溶液を使用します。これらのpHはともに3.1〜3.3です。
 pHは空気中の二酸化炭素の吸収などで簡単に値が動いてしまいます。このため、pH変動に対する対策がしっかりとなされた試験機を使うことが、正確な試験結果を得る上で重要です。また、正確な試験結果を得るため、規定上、1度ある条件の噴霧溶液を使用した場合、その装置で別条件の噴霧溶液を使用することはできなくなっています。十分な洗浄をしたとしても、前の噴霧溶液の影響が残ってしまうからです。

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